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【planetarian ~ちいさなほしのゆめ~】第3話レビュー&感想

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~ 第3章 ゆめみの投影

修理を終え、上映中のパネルが赤く灯り少女の投影が始まった。
「本日は、花菱デパート本店屋上、プラネタリウム館にようこそおいでくださいました。
私は当館解説員のほしのゆめみと申します。投影を始めます前に、簡単な注意事項をお伝えします。投影中の私語は」
「そこはもう聞いたから省略してくれ」
そう言う彼にここは職務規定上省略できないのだと強く反発する。その反応をどこか納得したかのように彼は早々と折れ好きにやってくれと進行を促した。少女は一礼すると進行を再開した。
「携帯電話、時計のアラームなどはあらかじめお切りください」
彼は退屈そうに胸ポケットに手を突っ込むと、最後の食料を手に取った。
「また、投影中の飲食および喫煙はお控えくださいますようお願いします」
彼は手に取った食料をしぶしぶ胸ポケットにしまい込んだ。

「それでは最後に皆さまを星の世界へお誘いする大切なパートナーを紹介します。盛大な拍手でお迎えください。イエナさんです」
投影機は想定通りの稼働を見せ、無事に投影は始まった。
「さて、本日ついに当プラネタリウムは開館から数えまして248万7290人目のお客様にご来館いただきました。
スタッフ一同に成り代わりまして厚く御礼申し上げます。
本日はそれを記念しまして特別投影をご用意しました。それではごゆっくりお楽しみください」

館内の照明が切り替わり秋の夜空が再現された。

「秋の一日、外は雨でした。こういう日はなんとなく気分が沈みがちです。
ですが安心してください。ここではいつでも太陽を呼び出すことが出来るんです。
はい、これが太陽です。ゆっくりと西の空に沈んでいきます。一番星が見えてきました。宵の明星、金星です。空はだんだん暗くなっていきます。さあ早くおうちに帰りましょう。やがて夜のとばりが辺りをゆっくりと包みます。今晩8時の星空です」

彼女の投影は進行していき、各々の正座の説明を丁寧にこなしていく。

(星に、吸い寄せられそうになるな)

星が見えなくなった世界で、彼は心の中で呟いた。進行する彼女の投影は星にまつわる神話へと続いていく。宇宙(ソラ)の見えない荒廃した世界で、星に興味のなかった男は少女の見せる星の世界に魅せられていった。

(今この世界において彼女は万能の語り部だ。星空は彼女の庭であり、王女も勇者も
怪物も神々もすべて彼女の思いのまま、うやうやしくかしずき銘銘の役柄を演じている)

「さあ、次はいよいよ特別投影です。題しまして宇宙に羽ばたく人類の夢」

突然、バッとすべての照明が落ち機材は停止した。動揺する二人。
「どうした? 故障か?!」

(いや、まさか)彼の脳裏に嫌な憶測がよぎった。

 

少女と共にブレーカーを見に行くとスイッチはONのままだった。それは男の憶測を確かにするものだった。

ブレーカーを確認した彼の横で、心配そうに修理するための指示を仰ぐ少女。しかし状況から故障ではないことは明白だった。電源が失われたことを話すも理解できないロボットの少女に、彼は丁寧に状況を説明した。

そして、”もう元には戻らない”ことを伝えた。

落ち込む少女に彼は一つの提案を持ち掛けた。
「いいか、俺の言うことをよく聞け。投影を続けろ、お前の声だけでいい」
男は彼女の解説だけ聞かせてほしいと提案する。星に詳しい自分は、彼女が話せば何が映っているのか全部わかると。
それを聞いた少女は、彼のような客が来てくれて本当に嬉しいと無邪気に喜んだ。
「それでは、お言葉に甘えまして、私の解説のみで続けます。どうぞこちらへ」
そう言い先導する少女の背を見ながら、
(本当に、疑うことを知らない奴だ)と、彼は思った。

 

「それでは、特別投影を再開します」
真っ暗な館内に引き返してきた少女のリボン型の装飾パーツが辺りを小さく照らす。
音も映像もない中で、ゆめみの投影が再開される。
その話に耳を傾けながら目を閉じると、少女の物語に引き込まれていった。

「ずっとずっと、ずーっと昔のことです。冷たくて暗い洞穴の中で、人の祖先たちは身を寄せ合って暮らしていました。

世界は氷に覆われ鋭い牙のある獣がうろうろしています。ある凍てつく夜、一人の若者が目を覚ましました。

きっと寒くてお腹もペコペコで眠れなかったのでしょう。眠い目をこすり、彼は洞穴の入り口からそーっと外を覗いてみました。

冴えわたった夜空いっぱいにたくさんの星がキラキラと輝いていました。その時代からずっと、人は無限広がる星の世界に憧れ続けてきたのです。

そんな人類が空の先、宇宙を目指すのは当然のことでした。はるかな高みへ、夜の闇を抜けて、たくさんの涙の粒を新しい夢の雫に変えて、いつしかその手は宇宙へと届いていました。

太陽系第三惑星。これが、私たちの地球です。どこまでも美しい地球。しかし、今、様々な諍いや争い、解決できていない問題があります。人口問題、エネルギー問題、食料問題、宇宙領土問題、ですが私は信じています。人はすべての問題を必ず解決し、いつの日かきっと星の世界を駆け巡ることでしょう。

さあ、今宵は特別にとっておきの秘密を打ち明けます。

プラネタリウムはタイムマシンでもあるんです。

遠い過去からはるかな未来まで、自由自在に時間を操ることが出来るんです。

ご覧ください、今からちょうど千年後の夜、この場所から見える星空です。

投影機のイエナさんとロボットのほしのゆめみが一生懸命に紡いだ、ささやかな未来の星空です」

「どうか皆さん、ここで見た星空を忘れないでください。あなたが暗闇に迷い、本当の星空が見えなくなってしまった時、そっと思い出してみてください。それが、小さな私の夢です」

終わりを告げる彼女の投影。彼はその余韻からか、閉じたまぶたを開けられずにいた。その様子を眠っていると思った少女は静かに彼の隣に腰かけた。

──いつまでも話し続ける彼女の声を聞きながら、世界にまだ雨が降り始める前のことを思い出そうとしていた。

 

翌日


 

最後の食料を噛みしめた男はこの場から離れることを決意する。エントランスホールへ出るといつものように来るはずもない客のために業務に従事する少女がいた。昨晩の不完全な投影を謝罪する彼女に、彼は悪くなかった伝える。そして、ぎこちなく彼の口から言葉が漏れた。

「なあ、お前は、これから……」

「なんでしょうか?」

「……なんでもない。俺はもう行くからな。生きて帰れるように祈ってくれ、ロボットの神様にな」

「はいっ」

出口へと向かう彼の背に向けられるロボットの表情は、どこか寂しげだった。ドアを出た彼を聞き慣れた声が引き止めた。

「……お客様。失礼ですが、お聞きしてもよろしいですか?」

帰り道について事細かく質問を繰り返す少女に、彼は聞き返した。

「なぜ、そんなことを聞く?」

ロボットの少女の口から発せられたのはとても信じがたい言葉だった。

「サポートセンターに職務規定特例に基づく行動指示要求を発信しましたが受諾されませんでした。そのため、以降は私が独自判断により行動することになります。お客様のお車まで私がご同行します」

おおよそ機械の判断だとは思えない言葉に彼は驚きました。

「……正気か?」

「いいえ、少しだけ壊れています」

三章はここでエンディングに入ります

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~第3話の感想

いかがでしたでしょうか?

二章では彼の心の描写が主でしたが、三章はそれに加えてゆめみちゃんの変化が描かれていたように思います。ところどころにそのような描写が散りばめられているのですが、特にプラネタリウム館を立ち去ろうとする屑屋に向けられた眼差しは強く印象に残ります。ロボットには芽生えないであろう心が、ゆめみちゃんには存在しているのではないでしょうか。それを裏付けるようにラストには自身の独自判断で彼を送迎すると言い出します。

今回は以上になります。ここまでお付き合いいただきありがとうございました

 

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