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【planetarian ~ちいさなほしのゆめ~】第4話レビュー&感想

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~ 第4章 酒に酔う

支度を済ませた二人は無人の通りを見渡していた。

「誰もいませんねぇ」

「……雨だからな」

(歩いて2~3キロくらいか。途中ヤツらに出くわさなければ帰れるか)

「お前のバッテリーは後どのくらいもつ」

「はい、現状の業務モードでしたら後4日活動出来ます」

「じゃ、帰りは問題ないな」

「はい、半径3キロメートル以内でしたらどの場所からでも単独で帰着が可能です」

「そうか。それじゃ行くぞ」

「はい、わかりました」

歩き出した男の後方、鈍い音が響く。振り向くと出発一歩目でつまづき地面に伏す少女の姿があった。

「……おい?」

転倒の際に手放してしまったガラクタの花束を拾い上げ、泥で汚した顔を上げた。

「段差があるのでご注意ください」

 

気を取り直し目的地へと足を進める道中も、彼女のお喋りは健在だった。廃墟となった街のガイド率先している。

「お客様は、シュークリームはお好きですか?」

「好きも嫌いも、食べたことが無い。それより案内はいいからもっと早く歩いてくれ。急いでいるんだ」

「はい、承知しました。お客様、こちらのビルの五階には当デパート提携のビアホールがございます。新鮮な魚介料理と共に様々な地ビールをお楽しみになり」

「頼むから無駄口を叩かずにもっと素早く歩いてくれ」

「はい、承知しました」

少女の足から無機質な異音がした。大腿部動力ユニットが過熱してしまい冷却が必要とのこと。

二人は雨のしのげる近場の階段に腰かけた。出発からおよそ1キロメートル、既に4度目の休憩だった。休憩中も少女の口が止まることはなく、ここで始めて男の職業を屑屋と知る。30年前には存在していなかった造語を理解できない彼女に、男はわかりやすく廃品回収業と伝えるとそれは尊いお仕事だと称賛した。

「そろそろ行くぞ」と腰を上げると、それに続く彼女は手元のガラクタの花束を大事そうに持ち上げた。

「そいつは置いていけ」

「そいつ、と言うのはこの花束の事でしょうか?」

「そうだ。そいつを持ってると転びやすくなるだろう」

「ですが、これはお客様のものですので」

「だから……! いや、わかった。その花束は俺の物だ。だから俺によこせ」

「はい。どうぞ、お客様の花束です」

(……俺の花束か)

 

再び街を進む二人の前に酒屋の看板が目に入る。外観から見てもひどく損壊していたが、男は少女を外に待機させ単独で足を踏み入れた。内部も荒れており床を踏みしめるたびに割れたガラスが足元を鳴らした。

(……せっかくの酒屋なのに、何も残ってないな。せめて半壊ならな)

諦めかけたその時、彼の視界には一本の未開封と思われる酒瓶。目標に一直線へと向かい手を伸ばす彼の脳裏にある日の光景が蘇る。それは過去に探索した廃墟での、同僚の助言だった。

「人間、死ぬときは案外あっさりと死ぬもんだ」

「あんたは、地雷踏んでも生きてそうな気がするがな」

「ちげえねぇ」

そんな会話を終えた同僚が戦利品である一本の酒瓶を手に取った瞬間、仕掛けられていた爆弾が起動し木端微塵に吹き飛んだ。大戦時に仕掛けられたまま残っていたブービートラップだった。

同僚のあっけない最期を彷彿とさせる酒瓶に、慎重にならざるを得ない男に緊張が走る。

(人間死ぬときは、案外どうしようもないことが多いからな。ワイヤーや重量検知らしい仕掛けはない。他に可能性としては……)

張り詰めた空気、様々な危険性を考慮する彼の背後から手が伸びた。その華奢な手は酒瓶を躊躇なく持ち上げた。

「……?!」思わず声にならない声が漏れる。

「どうぞ」

一瞬、時が止まったかのようだった。思うところはあったが、込み上げる感情を殺し彼は差し出された酒瓶を受け取った。一通り品定めし終えると、

「……散々苦労して、獲物はこれ一本か」と呆れ気味にほくそ笑む。

「お客様のお持ちの瓶はスコッチウイスキーだと思われます。12年のシェリーバレル。税込み価…」

「物知りだな、お前は。大したもんだ」

彼は戦利品である酒瓶をそのまま口へと運んだ。

 

 

間もなくして二人は目的地である封鎖壁に近づいていた。ここまで来ても街には当然ひと気はない。雑談を繰り返すうち、彼はふと思い出したかのように尋ねた。

「そういえば、お前が何を願うかはまだ聞いてなかったな」

「はい、その通りです」

「何を願う」

少女は両手を胸の前で握りしめてこう言った。

「天国を、天国を二つにわけないで下さい。私はロボットの神様にそうお願いしたいです。天国の門は人間とロボットに分かれていたら私はとても困ってしまいます。私は天国に行っても人間の皆様のお役に立ちたいです。これからもずっと皆様のお傍で働きたいです」

「……そうか」

「はい、そうなんです」と笑った見せた。

男は迷っていた。壊れかけたロボットの少女を守りたい対象だと認識してしまっていた。彼の中での葛藤がこれまで以上に大きなものへと変わっていった。

(このまま放っておけば、バッテリーが切れる。こいつの願いを叶えるためにはこの街から連れ出すしかないが、こいつの意思に関係なく無理やり連れ出すのか?)

「お客様? お車まではまだ遠いのですか?」

「いや、もうそろそろだ」

「それはよかったです、では行きましょう」

「ああ」

(まったく、久々に酒を飲んだせいだな。……いや、酒を飲むよりずっと前から、俺は十分すぎるほどに酔ってしまっていたんだ)

「お客様?」

「なんでもない、行こう」

(彼女を、どうすればいい)

 

 

ついに封鎖壁の目前に迫った二人は見晴らしのいい建物を陣取っていた。そこから彼の双眼鏡に映るのは自動砲台”シオマネキ”と呼ばれる対人戦闘機械だった。高くはない勝算、男は標的を排除することを決心する。そして、少女にとある選択を迫った。

「いいか、これから俺の言うことをよく聞いて理解しろ。ここに来るまでにお前が見てきた事実だけですべてを判断しろ、この街にはもうお前もプラネタリウムも必要ないんだ! お前がこれからも人間のために働きたいと思うのなら俺についてくるしかない。それがお前にとって幸せなのか俺にはわからない、だが、俺には……」

「私は、これからも人間の皆様のお役に立ちたいと考えます。それが、私の幸せです。ですが、お客様のお話からこれからの行動を決定するには、情報が不足していると考えます」

「お前が、これ以上の情報を得る手段はない。わかるだろ。……俺が戻るまでに考えておいてくれ」

「はい、わかりました」

自分が戻るまで動かないよう念入りに言い聞かせ、彼は単独で戦闘機械の破壊へと向かった。

 

 

最も射撃に適したビルの高所に移動した彼は、静かに銃口を標的へと向ける。照準器を覗きながら彼は淡い将来を想う。

(充電装置は高くつくが手に入らないことはない。彼女のために、小さな投影機をしつらえてやることも出来るだろう。それらをたずさえて居住区を旅して周り、彼女の解説で星空を見せる。そんな商売に鞍替えするのはどうだ? 馬鹿馬鹿しい)

「悪いが、また相棒が出来ちまったんでな」

放たれた弾丸は弧を描きながら狙った射線を落ちた。しかし命中した弾は不発に終わり、射撃地点を即座に逆算した自立砲台は迎撃の発射体制を取った。

「ミスファイア?!」

間髪入れずに発射された弾丸は男のいた位置をビルの壁もろとも粉砕した。

四章はここでエンディングに入ります

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~第4話の感想

いかがでしたでしょうか?

道中、目に入る建物すべてをガイドしようとしたり、休憩を希望したり、見方によっては故意に時間をかけているように思えてしまうのは私だけでしょうか。終わりに近づいていく彼と過ごす時間が名残惜しかったのかもしれませんね。

【planetarian ~ちいさなほしのゆめ~】は次の五章が最終話になります。ここまでお付き合いいただきありがとうございました

 

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