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【planetarian ~ちいさなほしのゆめ~】第5話レビュー&感想

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~ 第5章 ゆめみの願い

ビルの一角を粉砕する砲撃は、遠くで待機するゆめみの目に映っていた。

間一髪で初撃を回避し壁際に身をひそめる男だったがすぐに機関銃による追撃が浴びせられた。圧倒的な劣勢、それでも男はその場から素早く退避し階段を下へと駆けていく。

外へ出た男は、いまだビルに標準を合わせるシオマネキを車の陰から様子をうかがう。

(初弾で屠れなかったのは、痛すぎるな。……残弾は二発、出来るだけ肉薄し、まず足を止める。それから上面装甲を狙って確実に撃破する)
男は意を決するように短く深呼吸し、物陰から飛び出した。

駆け寄る男を捕捉したシオマネキの銃撃が容赦なく襲う。彼は敵を翻弄するため不規則に軌道を切り換えながら近づく。そんな彼の眼前には身を隠せそうな装甲車の残骸、水路などの死角を利用しながら近づきその陰へ身を隠した。

「……無駄弾は撃たないか」
シオマネキは4本の足先をローラーに切り替え機動性を上げた。
「敵火力が特定できていない場合の定石行動だな。すぐにまたけん制射撃が、そら来たッ!」

男は装甲車を盾にしながらタイミングを見計らった。

(……いち、に、さん)
彼が放った弾丸は狙い通りに足を破壊した。が、敵火力を更新したシオマネキは即座にレールガンを構えた。男はすぐにその後の展開を悟ったが対応は出来なかった。

レールガンの一撃は装甲車ごと男を吹き飛ばした。

(クソ、耳鳴りが。状況の確認……再装填に30秒弱、次がすぐに来る!)

男は立ち上がったがその身はすぐに地に伏した。

「折れてるか。目には目を、足には足をというわけか……っく」
すぐにシオマネキによる追撃が続き男を追い詰めていく。

なんとか回避する男だったが片足ではすぐにつまづき、頼みの綱である武器を手放してしまう。

次の瞬間、男の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。来るはずのない、待機を命じていたはずのゆめみがすたすたとシオマネキに歩み寄っていた。

敵の注意は完全にそちらに向いた。男にその好機を逃す手はなかった。すぐに武器を手に取り弾を再装填。狙いを定めた。
なおも歩み続ける少女、そして男の砲撃が発射されたと同時にシオマネキの銃撃が彼女を襲う。
上面装甲に命中した弾丸は爆発しシオマネキに致命傷を与えたが、機関銃による無数の弾丸は少女の華奢な身体を撃ち砕きながら宙へと浮かせた。

シオマネキは機能を停止したが地に伏したゆめみは無残な姿へと変わっていた。

すべてが終わった後、彼はただ呆然と眺めていた。雨音だけが響く街で、彼は少女の下へ近づいた。

「何故こんなバカなことをした!」

「お客様、お帰りなさい。お怪我はございませんか」
「俺が戻るまで動くなと言っただろ!」

その返答は機械音声で再生された。

『暴走状態にあると思われる未登録機体に強制停止信号を発信しましたが受諾されませんでした。受信側に問題が発生していると判断し物理操作での緊急停止を試みましたが失敗しました。暴走状態にある機体は、現在機能を停止していると思われます。該当する機体から離れ、最寄りの警察機関もしくはサポートセンターにご連絡ください』

「重要命令を破ってしまい、申し訳ありませんでした。もっと古い、約束ごとがあるものですから。人間に危害が及ぶのを看過してはならない。これを守ることが私たちロボットの誇りです。お客様、お怪我はございませんか?」

「……ああ。俺は、大丈夫だ」

「本当に、良かったです。彼に代わって、心よりお詫び申し上げます。きっと彼も壊れていたんだと思います。私たちロボットは人間の皆様の幸せのためにありますから、あのような乱暴なことは、本当はしたくなかったんだと思います。私には、わかります。私も、少しだけ壊れていますから。おそよ600秒で緊急作動用電池が残量ゼロになります。バックアップ用電池が消耗しているのでその後は起動不能となります。メンテナンスコールを発信しておりますが、受諾されません。少しだけ、心細いです」

「誰も呼ばなくていい! 俺が助けてやる」
「ですが……」
「俺が直してやるから」
「お見苦しくて申し訳ありません。ですが、ご安心ください。私はロボットですから、苦痛を感じることはありません。筐体を修理することも出来ますし、新しい筐体に交換することも出来ます」
「……お前を修理できる技術者も、新しい筐体も、お前を必要とする人間さえ、この世界には、もう」
「そのようなお顔をされては、私はとても困ってしまいます。私は、ロボットです。お客様の笑顔が、いちばん大切です。みんな、覚えています。私はロボットですから、覚えておくのは得意なんです」

少女の両耳に装備されたイヤーユニットから過去のホログラムが映し出された。
そこには大戦前の世界の人々が、彼女の投影に各々の感想や感謝を伝える様子が記録されていた。次々と映し出される彼女の思い出、最後に映し出されたのは彼女を残し避難する職員たちの姿だった。

「ゆめみちゃん、俺たち、みんなでしばらく旅行に行くことになったんだ」

「ご旅行ですか、それは素晴らしいですねぇ」

「ゆめみちゃん、私たちが帰ってくるまで、ここで待っててくれる?」

「はい、わかりました。それで、お戻りはいつでしょう?」

「それは……」

「ま、まだわからないんだ。だけどね、私たちは、必ずここに帰ってくる。その時はまた、一緒に働いてくれ。いいね、ゆめみ?」

「はい、館長さん」

「ごめんね、ゆめみちゃん……こんなところに、独りぼっちで」

「私の事でしたら、どうぞお気遣いなく。私は、イエナさんと一緒にいつまでも待ってますから。どうぞ、留守は私にお任せください。皆さん、どうぞ楽しいご旅行を」

「29年と、71日前の、記録です。当館の初投影以来、44年と、138日が経過して、います。お客様が、いらっしゃるまで、私は、何度も考えました。
館長さんや、スタッフの皆さんは、いつ戻ってくるんだろう? 次のお客様は、いついらっしゃるんだろう? すると、いつも同じ結論が出ます。
人間の皆様はもう、戻ってこないという結論です。でも、そんなはずはありません。きっと私は、壊れているのだと考えました。自己診断プログラムを実行して異常を探しました。

でも、異常はどこにも見つかりませんでした。きっと、自己診断プログラムに未知のバグがあるのだと、考えました。
お客様がいらっしゃった時、私は、本当に嬉しかったです。やっぱり、私は間違っていたんだ、お客様は私のことを忘れてはいなかったんだと、
そう考えて、本当に、嬉しかったです。でも、違ったんですね。私は、壊れてなくて、壊れていたのは……。どうして、壊れてしまったのでしょう。

およそ150秒で、緊急作動用電池が残量ゼロになります。バックアップ用の電池が、消耗しているので、その後は起動不能となります。
もう一度だけ、記録可能です。お客様、当館にお越しになった記念に、ぜひ、一言どうぞ」

「……いいか、よく聞け。本当のことを言うとな、俺はお前を迎えに来たんだ」
「と、申しますと?」

「あの壁の向こうにはお前の新しい職場がある。お前の相棒の投影機も、お前の同僚も、みんなそこで待っている。客も満員で、お前を待っている。お前の解説を、みんなで楽しみにしている。お前は今日から、そこで働くんだ、いつまでも、お前の好きなだけ働くことが出来るんだ」

「それはまるで、天国のようですね」

「……ああ。ああ、そうだな」
「お客様がどなたなのか、私はようやくわかった気がします。お客様? 私のお願いを聞いていただけますか?」
「ああ、なんだ」

「私の、イヤレシーバーの後ろのスロットにメモリーカードが挿入されています。私の記憶はすべて、それに記録されています。
全部が、素晴らしい思い出ばかりです。それを、新しい職場に、届けていただけますか? 新しい筐体を用意していただければ、私はその日から業務を始められます。

私は、いつまでも、人間の皆様のために、働くことが出来ます。ですから、本当のことを申しますと、私には、天国は必要ないんです。ですが、もしも、どうしても、私を、天国に、召されるのでしたら、神様、どうかお願いです。天国を二つにわけないでください。ロボットと人間の、二つにわけないでください。私は、いつまでも、いつまでも人間の、皆様の」

「わかった。俺が届けてやる」
「はい、ありがとう、ございます。とても、嬉しいです。お客様? どちらに、おいででしょう? お客様? そちらに、いらっしゃいますか?
どうしてでしょう。私はやはり、壊れている、みたいです。私は、廉価版なので、涙は流せないのですが、もしも、機能が搭載されていたら、きっと、泣いていると、思います。涙が、止まらないと、思います。

私は、とても嬉しいのに。幸せな、気持ちで、いっぱいなのに。どうして、でしょう。新しい職場は、どんなところでしょう。いつ、お客様が来てもいいように、万全の態勢でお迎えしなければなりません。
プラネタリウムはいかがでしょう? どんな、時も、決して、消える、ことの、ない、美し……」

瞳から光が消え、それが少女の最期の言葉だった。あのお喋りな声を聞くことはもうない。絶え間なく続く雨の下、悲しみを振り切るかのように男は顔を上げた。
少女の壊れた筐体からメモリーカードを抜き取り収めた。
「……行かなくちゃな」
その場に銃を捨てた男は封鎖壁を後にした。

 

第五章はここでスタッフロールが流れます。

エンディングが終わると、封印都市から脱出した男が他の同業者数名に発見されるシーンが流れます。そこで「あんたも屑屋か」と問われると彼はこう答えます。

「違う。俺は、星屋だ」と。

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~第5話(最終回)の感想

いかがでしたでしょうか

ラストに銃を捨てたのは、おそらく屑屋ではなく星屋として生きていくことを決めたからでしょう。ゆめみちゃんは終始、人を疑わない子でしたね。4章で彼が少女に町から出ることを提案したとき、彼女は情報不足で決められないと言ってましたが、彼が来るよりもずっと前に”人間の皆様はもう戻ってこない”という結論に達していたのが切ないですよね。それでもなお、人間を信じるために自らを壊れているとした、彼女の健気さが美しいと思いました。そんな時に現れた彼だったからこそ、本当に嬉しかったんでしょうね

補足

これで WEBアニメ【planetarian ~ちいさなほしのゆめ~】は完結となります。それからおよそ二か月後に続編である劇場アニメ【planetarian 〜星の人〜】が公開されると言う流れになっています。

そして2019年、原作15周年を記念して【planetarian雪圏球(スノーグローブ)OVA化プロジェクト】が発足しました。驚くことに2016年にアニメ化された作品ですがいまだに旬アニメと呼べるんですよね。ちなみに雪圏球は大戦前、まだ平和だった頃にデパートで働くゆめみちゃんの物語になります。

参考にyou tubeにUPされている公式PVを載せておきます。

※音が出ますので音量にご注意ください

【planetarian~雪圏球(スノーグローブ)】
本編の前日譚。世界中の人類が熱狂した宇宙開拓が終焉を迎えつつある時代。花菱デパート、プラネタリウム館のコンパニオンロボット「ほしのゆめみ」は業務命令を無視して職場放棄を繰り返していた。それはゆめみが10年前に行った、ある「約束」が原因で……。世界がまだ平和だったころの、心温まる物語。

【スタッフ】
原作:「planetarian ~雪圏球~」(Key)
監督:玉村 仁
シリーズ構成・脚本:ヤスカワショウゴ
キャラクターデザイン・総作画監督:竹知仁美
プロップデザイン:江間一隆
美術監督:渡辺幸浩
美術設定:村田貴弘
色彩設計:佐藤裕子
撮影監督:渡辺有正
3D監督:長澤洋二
編集:廣瀬清志
音響監督:山口貴之
音響効果:小山恭正
劇伴・楽曲制作:Key/VISUAL ARTS
スーパーバイザー:津田尚克
アニメーション制作:オクルトノボル
製作:15th planetarian project

 

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