本日は2022年9月30日にYouTube上へアップロードさせていただいた「ダーク・ネクロフィア」の自作フィギュアをご紹介いたします。
動画内で使っている道具や材料、技法などを重点的に解説したいと思います。
また、尺の都合で動画内ではカットした台座の製作過程もお見せします。
製造法は独自のもので、私も技術を磨いている最中ですのでこれが最適解というわけではございません。
あくまで参考にとどめていただき、何かのヒントになれば幸いです
ダーク・ネクロフィア メイキング映像
©高橋和希 スタジオ・ダイス/集英社
上記が実際の動画になります。
一連の流れはYouTubeにUPしているので、事前に視聴しておくことで内容を把握しやすくなると思います。
動画はカット多めのダイジェスト映像となっています。これはリアルタイムで流すと膨大な時間になり、動画内で解説まで行うととてつもなく長い動画になってしまうためこのような形を取りました。
これより以降は、それぞれの工程にコメントを添えながら「このシーンは何を行っているか」「道具は何を使っているのか」などに焦点を当てながら説明していきます
作り方
最初は基礎となるボディの成形を行っています。
すべて一から自作すると時間がかかるためここでは芯材としてヤマトマネキン 1/12サイズを使用しました。
しかしこの製品は加工を前提として売られているわけではなく、私自身も試用するために購入した意図がありますのであまりオススメしません。
扱ってみた感想として非常に使いづらい素材でした。
具体的には、
- 材質が固く加工に苦労する点
- 関節ジョイントが固く組み立てづらい
- はっ水の性質があり粘土が貼り付きにくい
などの特徴があります。
臀部の造形
次に形を整えた腰パーツに、樹脂粘土を球体ツールで押し付けています。
先が丸い道具であれば何を使っても問題ありません。ちなみに動画内で使用しているのはこちらの道具です。
球体で押し付けることでクレーターのように陥没します。後々ここが胴体の接続部分になります。
また、
使用している樹脂粘土(ブラック)は終始ダイソーの製品を使っています。
100円で売られていますので気になった方は店頭で探してみてください。粘土コーナーに売られていない場合は手芸コーナーの方に陳列されていたりします。
近場で購入が難しい場合はパジコの樹脂粘土が扱いやすくメジャーですので検討してみてください
金属部位の製作
ここでは薄く黒い物体をデザインナイフで切り分けている様子が流れていますが、これはネクロフィアの右腕や腹部などにある金属部分のパーツを切り出しています(以下参照)。
上記の右腕と腹部にこの工程で製作した部品を使用しています。
ご存知の通り樹脂粘土で角(かど)は表現しにくいです。
ですのであらかじめ薄く伸ばした粘土を硬化させ、シート状になった粘土を切り分けることで角のある部品を作り出しています。
樹脂粘土には完全硬化後もある程度の柔軟性がありますので、その性質を利用しています。
ただ、当然ながら乾いた粘土同士で接着することは出来なくなっていますので組み立てには瞬間接着剤を使用しました
下地の準備
ここでは芯材のマネキンに樹脂粘土を薄く貼り付けています。
先ほどマネキンの特徴として「はっ水の性質があり粘土が貼り付きにくい」と記述したように、最初から芯材の上で造形しようとすると粘土が剥がれてしまい作業が非効率です。
ですので粘土がしっかりと張り付くように下地目的でこの処理を施しました。
この下地が完全硬化してから、上に粘土を盛りつけて造形する流れになります。この際、接着剤は使っていません。
ここでは腹部を製作しています。
ネクロフィアの腹部は歯車などのカラクリが露出した見た目になっていますのでそれを再現している最中です。
特に設計図は無くそれっぽい造形になるように適当なものを付与していきました。
ここで使用している歯車パーツは、seriaの手芸コーナーで購入したものです。
近場に店舗がなければ手芸アイテムとしてamazonでもいくつか売られているので通販で探してみるのもいいかもしれません。
また、
動画内では尺の都合でカットしましたが胸部装甲も樹脂粘土で製作しています。
朽ちた人形の製作
ここではネクロフィアが腕に抱える不気味な人形を製作しています。
まずはドールアイを用意するのですが、このサイズでは小さすぎるため自作するしかありません。そこでエアソフトガン(通称エアガン)に使用するBB弾を加工して使います。
まずはBB弾にピンバイスで穴を開けるのですが、安物だと簡単に欠けたりしてしまうため東京マルイ 電動ガン対応 0.2gを使用しました。
最初から太いサイズで穴を開けようとせず、細いサイズのピンバイスで穴を開け、そこを基点に徐々にサイズアップさせ穴を広げます(動画ではカットされてます)。
次に黒目ですが、今回は小さく丸めた樹脂粘土を仕込んでます。正直な話をすればこれは手を抜いております。本来は塗料で穴の内部を彩色した方が綺麗に仕上がりますが、ボロボロに朽ちた人形を製作するだけならそこまでしなくても良い、と判断しました。
最後に穴をUVレジン液でふさぎ、UVライトで硬化させ完成となります。
上記は動画とは別に撮影していた制作の様子です。
完成したドールアイを使い頭部、胴体、片腕を樹脂粘土で製作しました。頭部の造形では首につまようじを差し込み利便性を向上させて行ってます。硬化後に除去し、その付近を微調整すれば綺麗にまとまります。
完全硬化しましたら動画内でも見られるように塗装を行いました。
ここで使用したのはGSIクレオス Mr.カラーの45 セールカラーです。ラッカー系の塗料で扱うには多少の知識が必要になるのでご注意ください。
その後、乾燥した塗装の上から同じくGSIクレオス様のMr.ウェザリングカラー マルチブラックでスミ入れと汚しを両立して行いました。
補足ですが扱う塗料によってうすめ液(洗浄液)の種類も変わります。念のため以下に記します。
- Mr.カラーにはMr.カラーうすめ液
- Mr.ウェザリングカラーにはMr.ウェザリングカラー 専用うすめ液
を使います。
上記は混ぜられないのでご注意ください。容量にはいくつかのサイズがありますのでご自身にあったものをお選びください
最後に仕上げとして水性プレミアムトップコート つや消しスプレーを吹き付け完成です。
“水性”を選択したのはウェザリングカラーの塗膜が弱いからです。ラッカー系のトップコートだとその弱い塗膜を浸食してしまう場合があります。
瞳には光沢が残っていてほしいので目はマスキングテープで保護してから作業しました。このマスキングテープも様々な幅が売られていますので、可能ならば模型店で全サイズひとつずつ買っておくと便利です
左腕の造形
動画内ではネクロフィアの特徴的な左腕を造形している映像が流れます。
前述したように粘土の食いつきが良くなるようにあらかじめ下地は済ませた状態で造形を開始しています。
また、青い肌の塗装も既に完了している状態です。
ここでの塗料も同じくラッカー塗料です。色はいくつかを調合して作り出しました。目分量でしたので配分を記述できないことをご了承ください。
使用している道具は薬さじと、スパチュラです。
薬さじは本来の用途とは違いますが使いやすい道具であれば何でも構いません。プロの人形作家の方でも竹を自分好みに削って道具にしていたりします。
腕に埋め込んだクリアパーツですが、これはドールアイの工程でも使用したUVレジンを固めたものです。
レジン用のシリコン型は様々な形状がネットや100均で扱われていますので自分に必要な型をあらかじめ収集しておくと良いでしょう。何度も繰り返し使えますのでコストパフォーマンスが高くオススメです。
継ぎ接ぎの再現
ネクロフィアの関節デザインはつぎはぎ状になっているのですが、そこを針金で再現しています。
手順としてはピンバイスで穴を開け、肌の青色を塗装、この時に塗膜が穴を塞ぎますので乾燥後に千枚通しのような先がとがった道具で穴を拡張します。
最後は動画でも流れているように適当な長さにカットした針金を差し込んでいきます。このような細かい作業にはピンセットがあると便利です
足の造形
基本的には腕の造形と同じ要領です。
ここではあらかじめ硬化させておいた球体状の粘土を、表面を柔らかい粘土で覆った足に埋め込んでいます。
埋め込んだときに周囲の粘土が盛り上がるのですが、それをそのままモールドとして生かしています
機械部分の塗装
金属表現の塗装についてです。
一層目はシルバー系で塗装します。
使っているのはGSIクレオス Mr.カラーの104 ガンクローム です。
一層目のシルバー系塗料が乾燥した段階で、ウェザリングカラーのマルチブラックでスミ入れと汚しを行います。
動画内では大胆にベタベタと塗っていますがウェザリングカラーは粘度が低い塗料ですので塗りすぎても綿棒などでふき取ることが出来ます。
最後に、ブラウン系の絵の具をつまようじに少量付け、金属のサビを再現しています。
ここで使っている塗料はリキテックス ガッシュ・アクリリック プラスのバーントシェンナです。
水溶性ですが乾くと耐水性を得るアクリル絵の具です。デフォルトでつや消し仕上げなのでサビの表現とは相性が良いです。
安価に済ませたい場合はseria(100均)でもアクリル絵の具は売っています。
ここまで終えましたら、仕上げに水性トップコートつや消しスプレーを吹き付けこれまでの塗装を保護します
古びた金属感、機械仕掛けの胴体にこだわりました。
胸部アーマーのバスト(オレンジ部分)は光沢を残すために最後に接着しました。胸の球体はUVレジンで製作し、Mr.カラーの59 オレンジ(橙) で塗装した自作パーツになります。
粘土でも製作できないこともありませんがレジン液は硬化後も粘土のように収縮せず、シリコン型を使うことで精度の高い球体を作れるので活用しました
各パーツの組み立て
ここまで来ましたら、これまでに制作した部品を組み立てる工程に入ります。
動画でも写っていましたが(10:10頃から流れます)、それぞれのパーツの接着にはアロンアルフアを使っています。接着剤がはみ出ると白化してしまうので扱う際はご注意ください。
腕や足に使っているクリアパーツはUVレジンです。
接着面となる底面はあらかじめシルバー系の塗料で塗ってあります。こうすることで光が反射し見た目が鮮やかになります
仕上げ
ここで上半身と下半身をアロンアルフアで接着します。この段階までバラバラにしていたのは製作の利便性を考慮してのことです。
そして腕、胸部アーマー、首、最後に人形を抱かせて完成となります。
取り外して遊べるように人形は接着しませんでした。アーマーも接着していませんが特に深い意味はありません。接着せずに固定できたのでそのままにしておりますが接着しても問題ないでしょう。
ここまでお疲れ様でした。
以下では動画では完全にカットした台座制作についての解説です。興味があればもう少しお付き合いいただければ幸いです。
専用台座の製作
フレームを板で塞ぎ(写真左)、表面を粘土で覆いました(写真右)
土台として利用したのはseriaで売られていた円形のフォトフレームです。
中に挟まっていた台紙やフィルムを取り外し、代わりに円形に切り出した適当なプレートを貼り付けます。ここは完全に見えなくなる部分ですので雑な作業でも問題ありません。
次に粘土の食いつきを良くするために表面を樹脂粘土で薄く覆いました。
これで下準備は終了です
樹木の製作
オカルト系のモンスターの背景としては、葉の散った不気味な木が相性が良いです。それを作ります。
針金やアルミホイルを使い骨組みを作ります。
枝の強度も増しますが、粘土の内部をアルミホイルにすることで乾燥時間を大幅に早めることが出来ます
上記が表面をすべて樹脂粘土で覆った状態です。
表面の質感はいかにも”粘土”という見た目ですがこの段階では気にせず大丈夫です。硬化する前に次の工程を行うとあまり効率が良くありませんので乾燥を待ちます。
芯が乾燥しましたらさらにシルエットの造形を加えていきます。
根本などが加えられ、だいぶ樹木らしくなってきました。まだ粘土が柔らかいのでここでも乾燥を待ちます
次に樹木の皮を造形していきます。仕上げに近い段階です。
樹皮の表現にはテクスチャーツールを使うと便利です。金属製の筆のような道具で、粘土の表面をなでるように傷つけることでリアルな質感を再現できます。
手順としては粘土を薄く盛り、表面へ伸ばし、乾燥する前にこのテクスチャーツールで造形していく流れになります。カンタンにリアルな樹木を表現できるので挑戦してみてください
地面、土の表現
完成した樹木を台座に接着し、地面から生えているように見せるために粘土で地面を作ります。
ただ粘土を盛っただけでは表面に粘土っぽさが残ってしまうので、丸めたアルミホイルをポンポンと押し当てながら表面を整えていきます。
地面に使用した粘土はseriaで売られている「木粉ねんど」という商品です。樹脂粘土と異なりザラついた質感になるので土の表現に適しています
上記はTOMBSTONES 20Piecesという商品
地面に刺さっている墓石はジオラマアイテムとして市販されているものを使いました。海外製品ですので供給にバラつきがありますが参考資料として記載しました。
実際の商品はグレーの成型色ですので塗装します。
手順としては下地としてサーフェイサーブラックを吹き、乾燥後にグレー系の塗料(私はMr.カラーの黒と白を混ぜてグレーとしました)でドライブラシを行います。
ドライブラシとは、その名の通り筆に塗料が残るか残らないかの状態で塗りたい対象の表面だけに塗料を残す手法です。コツとしては下地の黒が少し見え隠れする程度にとどめる事です。
※サーフェイサーもラッカー塗料も扱う際には喚起にご注意ください
ドライブラシが終わりましたらCitadel Shade AGRAX EARTHSHADEを全体的に塗り、年月の経過を表現します。シタデルカラーは通販ですと割高な傾向があるので可能であれば模型店で買うことをオススメします。
最後に仕上げとしてつや消しトップコートスプレーを吹けば完成になります
地面の仕上げとして、
木粉ねんどの上をコルクパウダー(ここで使用したのはCP-2細目)で覆いました。コルクパウダーは水で溶かした木工用ボンドで接着します。固定が出来たらお好みの塗料で色を乗せるのですが、ここではウェザリングカラーのグランドブラウンを染み込ませるように塗っていきました。
最後に強固な固定とする意味も込めてつや消しトップコートスプレーを吹き付けました。
墓石に貼り付いているゴミのような物はジオラマアイテムの枯葉・雑木 です。
紙製特有の薄さは気に入りましたが造形はサンプル写真とは異なっており私的にはイマイチでした。
木の根元にあるフワフワしたモノもジオラマアイテムです。無くても良かったのですが手元にあったので追加しました
霊魂の製作
主役の周囲に浮かぶ幽霊を作ります。
まずは針金を使い骨組みを製作します。次にその周囲を樹脂粘土で包み下地とします。
下地が乾燥しましたら、手や胴体の肋骨などを造形していきます。
最終的にあまり見えなくなってしまうのですが、頭部の中には頭蓋骨のような造形を施していました。
次に霊体をイメージして身体の周囲を粘土で包みます。
ここで使用したのはすけるくん 透明ネンド 200gという乾燥すると半透明になる特殊な粘土です。
左右の写真でその変化がわかるかと思います。
注意点としてこの粘土は乾燥後の収縮率が高く、扱うには慣れが必要です。私はまだうまく扱いこなせません。
最後に仕上げとしてすけるくん コート液 100gという商品を筆で塗ります。
表面がなめらかになると共に透明度が少し上がります。
コート液は水溶性ですので使った筆は水洗い出来ます。
制作した霊魂は樹木の背面にまとわりつくような形で接着しました。
完成後の写真では球体の霊魂もひとつ増えていますが作り方はおおむね同じです。
制作過程の解説は以上になります、お疲れ様でした
さいごに
『DARK NECROFEAR -Labyrinth of Nightmare-』
ずいぶんと長い説明になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
冒頭にもお伝えしましたが、
私もまだまだ技術を磨いている最中ですのでこれが最適解ではございません。
何かひとつでもお役に立てる情報をご提供できたのなら幸いです。
マイペースではありますがYouTubeでは今後も時間が許す限り投稿をしていきたいと考えておりますので良ければまた立ち寄って頂けたら嬉しいです。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました
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