今回は2021年10月31日にTwitterにて投稿させていただいたHalloween作品をご紹介させていただきます。
骨組みには素体人形を使用しましたが造形はすべて樹脂粘土による手作業の非売品となります。当ページでは主に製作の工程や使用した材料について触れていますので、モノづくりに興味がある方のお役に立つ技術が少しでも提供できれば幸いです。
※当ページで使用している写真はすべて拡大表示可能です
ハロウィンオリジナルキャラクター
冒頭にもお見せしているこちらの写真が今回製作したハロウィンモンスターになります。
Twitterにも写真と共に呟きという形で履歴が残っていますが、10月20日の初ツイートを皮切りに制作を開始し、31日に発表しましたので製作期間は乾燥も含め約10日間ということになります。
製作費は概算ではありますが原価換算で約2000円程度となりました。
(例:緑の瞳には100円で販売されているレジン液を使っていますが使用量は数滴なので10円程度と換算しました。ですので全てゼロから買いそろえる場合には2000円では収まりません)
以下は実際に投稿したTweetです。
インドア派の私もハロウィンに参加してみたいと思い制作に取り掛かりました。
一日で200以上のlikeと50以上のrtを頂き、この場をお借りして改めてありがとうございました。クリエイターとして他者からの評価は何よりも励みになります。
さて、ここからが本題になります。
造形自体も頑張りましたが特にこだわったのは本体に仕込まれたいくつかのギミックです。
- ひとつは前提として素体人形の関節を利用した可動フィギュアである点
- もうひとつは蓄光素材を使用した電源不要で光る瞳
- さいごに小型の強力マグネットを埋め込んだマスクのキャストオフ機構
この三点です。
造形を行うだけであればもう少し容易だったと思いますがこれらの遊び心を取り込んだことで10日間での制作はハードなスケジュールとなりました。ですがそれだけにお気に入りの一体です。
実はハロウィンをテーマにしているだけで作品名はありません。
ただ、モチーフはありました。
それは「カカシ」「死体」「植物」です。
一見すると交わることのなさそうなワードですが、これらを組み合わせれば新しいクリーチャーが誕生するのではないかと脳内でイメージを膨らませました。
YouTube版 DIY Sculpting a Pumpkin monster – Halloween
制作から1年後のハロウィンに合わせ、YouTubeへ動画をアップロードいたしました。
映像でのお披露目は初となりますのであらゆる角度からご覧いただけます
(2022/10/13 Upload)
作り方
制作の手順や工程は時系列順に辿っていこうかと思います。
あくまで私が作った場合ですので、参考程度にとどめていただければと思います。
ちなみに今回使用したのはDAISOで売られている樹脂粘土(上記の写真)です。
30gと少量ですが100円でお求めやすいため使い勝手はいいです。100均ながら粘土の質は悪くありません。
様々なカラーリングが販売されていますが塗装を考慮するとホワイトカラーが無難です。各色を使いこなせるのであれば無塗装で仕上げることも出来ます。
それらに不安があれば、若干高価ですがパジコの樹脂粘土「モデナ」がメジャーです。価格は100均よりも多い60g入りで約300円以下、同質の250g入りも販売されています。
樹脂粘土の保管方法についての記事を投稿しましたので合わせて参考にしてみてください(2022/10/15)
頭部(頭蓋骨)の製作
まずはカボチャの中に隠された素顔である頭蓋骨の製作に着手いたしました。
樹脂粘土をヘラなどを使い成型します。塗装の事も考慮し粘土はホワイトカラーを選択しました。目のくぼみや鼻の穴、歯並び、ひび割れた頭蓋骨など乾燥後にウェザリング(汚し)や墨入れを行うだけでリアルに見えるように意識しながら細かい部分を造形しています。
ちなみに写真でも使用している棒はGSIクレオス様のペインティングクリップです。乾燥や塗装、場合によっては製作時の持ち手としても重宝します。
頭部(カボチャ)の製作
次にカボチャを製作しました。
手順としてはカボチャらしく楕円形の丸を作り、その後にスパチュラなどを押し当て凹凸を造形していきました。きれいに分割するにはまず十字に切り込みを入れ四等分にし、さらにそれぞれを半分ずつに分割をすれば目分量でも容易にそれらしくなります。形のいいカボチャの写真などをお手本にするとよいです。
写真では仮組しているので一体化していますが、ヘタの部分は別途で造形し乾燥後に接着することにしています。パーツを分割することで塗装や造形を少しでも容易にすることが出来ます。
また、作業をしやすいように下部に竹串を刺して持ち手にしています。穴は開いてしまいますが最終的に首が通る箇所なので問題ありません。
最終的にカボチャのお面が出来れば制作方法はお好みでも構いません。可能であれば最初から完成形の造形を行ってもよいでしょう。ただ、私の技術力では難しそうでしたので実際のジャックオランタン同様にカボチャを製作したのちに中身をくり抜く手法を選択しました。
これは樹脂粘土が完全硬化する前に行います。
表面のみがある程度硬化し、まだ内部はやわらかい状態でカボチャを二等分し、内部のやわらかい粘土を適当な道具でくり抜きました。この状態で不要に力を加えるとせっかくの造形が崩れてしまうため丁寧な作業が求められます。
この作業の終了後、完全に硬化するまで乾燥させます。
完全硬化後、えんぴつなどで下書きしたのち目や口を開けます。えんぴつなので失敗しても消しゴムで消せますし、残っていたとしても仕上げの塗装で見えなくなりますので臆せず書き込んで問題ありません。
デザインによっては鼻にも穴を開けるでしょうが、サイズの小さな作品ですので強度の都合で鼻は開通させないデザインを採用しました。
ちなみに目や口を切り抜くのにはオルファのアートナイフプロを使用しました。普段はプラモデルのゲート跡処理やミニチュア制作に使っている万能ナイフです。切れ味が良すぎるので扱いには十分にご注意ください。
ボディの製作
次に身体の製作に着手しました。
可動フィギュアにするために芯となる素体人形を用意しました。
こちらは以前に500円で購入したカプセルトイです。本来は小さなマネキンという商品ですが素材にするために購入しました。商品の質は正直高くはなく、私のように加工前提で使う以外にはおすすめしません。
写真左が比較のために用意した無加工の状態で、写真右が加工後の胴体です。
カラーリングは異なりますがまったく同一の個体です。元々は女性の身体なのでカッターを使いまず胸をそぎ落とし、ヒップラインもすべて切り落としました。
おおよそカッターでの成形を終えたら次は表面を覆うように薄く樹脂粘土を盛りつけていきます。
手足にも同様に薄く樹脂粘土を巻きつけました(写真左)。
この工程の意味ですが、今回使用した素体人形は素材の関係(おそらくナイロン製)でうまく粘土が貼り付きません。そのため、その後の造形における利便性を高めるため下地として全体をうすく覆いました。しっかりと乾燥させましたら、その上には新しい粘土が貼り付きやすくなります。
ただこの素体、想定以上に粘土が張り付かないので乾燥後に液状の瞬間接着剤を粘土との隙間に少量流し入れ強固に固定することにしています。
写真右は下地の乾燥後に粘土を加えて造形している途中経過です。
当初から腕をアンバランスに長くする予定でしたのでこの段階でその骨格となるつまようじを差し込んでいます。
続いてはそのアンバランスな腕に組み合わせるハンドパーツを製作しました。
手のひらの作り方としては針金で骨組みを作り粘土を盛っていくのがメジャーだと思います。
細い針金を適当な長さに5本カットしまとめ、それらの半分までをねじってひとつに束ね、残りの半分を広げて手のようにします。
私は先に爪部分のみを別途で製作し乾燥させ、硬化したものを針金の先に差し込み、さらに瞬間接着剤で取り付けました。
骨組みが出来ましたらまずは針金を覆うように細く、薄く粘土を盛り、粘土が貼り付きやすい状態に整えてから細かな造形する手法を選んでいます。
針金は様々な細さのものが100均で手に入ると思います。用途にあったものを選びましょう。
そうして手が完成しましたら腕と組み合わせて右腕の完成です。
無機物から、生物的な腕が生えているようなイメージです。
右腕はこのようになりましたが左腕はデザインを変えカカシ風に仕上げました。あえてアシンメトリーにすることで不気味さが増します。
他の部位も同じ要領で製作していきます。
片足は骨と肉が露出しているかのような造形にしてみました。足首はほぼ骨格状態です。作り方に決まりはありませんが、私の場合は先に骨となる部分(棒状)を別で製作し、乾燥後にその骨を露出した部分に埋め込むという手順で製作しています。こうすることで簡単かつ違和感なく設定を表現できます。埋め込んだ部分の境目には新しい粘土を盛ることでつなぎ目が自然になくなります。
ちなみに足首にはつまようじを芯として埋め込んでありますが指先は細すぎるため針金などの芯は入っていません。
仮り組と台座制作
すべてのパーツが完成し、乾燥後に仮組を行いました。その状態がこちらの写真です。
まだ真っ白ですがすでに雰囲気は出ていますね。
先述した左腕は古びた手袋をかぶせられただけの腕をイメージしました。胸から突き出ている肋骨のような部分は別途で骨を製作し乾燥させた後に、胸に差し込むという手順で造形しています。実際の骨格とはまったく違う形状ですがクリーチャー感を強めるためにこのような形にしました。
ここまで出来ましたら残った工程は塗装や仕上げになります。塗装することで真っ白で曖昧だった造形もはっきりと浮かび上がります。
ディスプレイするための台座が必要ですので作成します。
冒頭でも述べたように全体の製作期間は約10日間で、台座にあてられる時間も乾燥期間を含め二日程度でしたので時短と少ない作業量で最大の効果が得られる加工を選択しました。
土台として100均で適当なフォトフレームを仕入れます。
不要な透明フィルムや裏の金具などを外しましたら底が抜けないように底板を木工ボンドで接着します。
次にアルミホイルでおおよその骨組みを作り、余っていた使いかけの樹脂粘土で表面を薄く覆いました(上記の写真)。
この状態では必要のない色がついてしまっていますがその後にこの上から木粉粘土を盛ることで地面とすることが出来ます。内部のほとんどがアルミホイルで、その上が乾きやすい薄く貼り付けた樹脂粘土、ある程度乾燥したところで水分を多く含む木粉粘土は一番表層を覆うことで時短に成功しました。
木粉粘土も100均で取り扱っていることが多いです。
木粉粘土は元々が茶色ががっているため無塗装で利用しました。期日の関係で塗装を乾かす時間も危うかったことも理由の一つです。
仕上げに草木が生い茂っているかのような演出を行いました。
ここではいくつかの手芸用品を使用していますがいずれも100均で手に入るものです。地面の四隅に少しだけ使用しているのがseriaで売られている「ナチュラスモスマットグリーン」です。そして上部大半を埋めているのがDAISOで売られていたもの(商品名を確認し忘れました)です。木工ボンドで接着しています。
岩のように見えるものはseriaで売られている「バークチップ」を塗装したものです。
台座に使用したすべての材料は以下の通りです
- フォトフレーム
- 木粉粘土
- 草木×2種
- アルミホイル少量
- 余った樹脂粘土
- バークチップのかけら×2個
どれも手に入りやすくいずれも100円と安価ですのでコストパフォーマンスが非常によいです。
塗装、仕上げ
塗装に関しては申し訳ございません。その都度、撮影している時間がとれず完成後の写真となります。
腕のピンク部分にのみ光沢を与えて生々しさを演出しています。
使用したのはマニキュア用のトップコートです。この場合のマニキュアで光沢を出す際の注意点としてはウェザリングカラーの上から塗ると汚し塗装が流れてしまうリスクがあるのでまずはスプレータイプのトップコートで表面を保護したのち、マニキュアを塗ります。
基本的にはベースとなる色を下地にベタ塗りにし、その上からドライブラシやウェザリングを重ねることでリアルな質感が生まれます。
また、爪など骨が露出している部分は白い樹脂粘土の色をそのまま活用しています。その場合塗装する工程で白い部分に余計な色が付着してしまった場合は、その塗料と同じ成分のうすめ液を浸した綿棒などでふき取れます(※①それぞれのうすめ液については後述してます)。
仕上げには水性タイプのつや消しプレミアムトップコートを使用しました(価格は都度変動しますが私は400円台で買ってます)。
トップコートは大きく分類すると水性とラッカー系の2種類に分けられますが、扱いやすさから水性を使う場合が多いです。スプレー時のにおいが少ないのもいいですね。
カカシを縛り付けているロープを演出しているのは「麻紐」で、こちらも100均で手に入るものです。
塗料にはいくつか使用しましたので以下に記載します。
今回の塗料にはラッカー系であるミスターカラーを使用しました。ジオラマ制作やプラモデルで愛用しているものを兼用しています。使った基本カラーは7色で、少し調合することで好みの色にしています。
塗装は筆塗りで行いました。特別なものではなく、3本入り100円の筆です。
塗料の粘度をサラサラにしたり、ドライブラシなど技法を使い分けることで単調にならないように心掛けています。
細かなモールドはウェザリングカラーを使ったスミ入れ技術の応用で対応しています。ウェザリングカラーは黒系から鮮やかなものまで様々なカラーが販売されていますので用途に合ったものをお選びください。基本的にはマルチブラックが主流かと思いますが、下地の色や条件によってはその限りではございません。
このウェザリングカラーを使う上で非常に便利なツールとしてGSIクレオス様から販売されているMr.接着剤用筆セットがあります。
本来は接着剤用の筆として開発されているようですが商品説明にもあるようにウェザリングカラーのキャップの裏に無加工で取り付け可能で、通常なら使用するたびに洗浄しなければいけない筆の手間を無くせます。ひとつ買うだけで10本分が付属するので多くの場合は所持しているウェザリングカラーすべてをまかなえる量なのではないでしょうか。
そしてもう一つオススメしたいのがひとつだけ混じっているタミヤ製の商品、エナメル塗料の「クリヤーレッド」です。(ちなみにタミヤ様の商品は通販では割高になる事が多いのでお近くの模型店で購入する方がお得な場合があります)
クリアレッドは様々なメーカーから販売されていますが、鮮血を表現する上でタミヤのエナメル塗料はとても優れています。仮に廃盤になった場合、代用品を探すのに一苦労しそうです。
上記の写真の光沢がある濃い赤の部分がタミヤのクリヤーレッド使用箇所です。写真には写っていませんがパンプキンマスクの内部もタミヤのクリヤーレッドを使用しました。
- 使い方としてはまず下地として肉を表現したい部分に別途でピンク系の色を塗ります。
- そちらが乾燥したのち、ウェザリングカラーで細かなモールドにスミ入れし余分な塗料を綿棒などでふき取ります。
- 最後にクリヤーレッドを最適な位置に乗せていきます。
たったこれだけの工程でリアルでグロテスクな表現が可能です。
クリヤーレッドの塗るのにはつまようじを使いました。つまようじの先に塗料を含ませ、鮮血を表現したい部分に当てると毛細管現象でうまく色が染み込んでくれます。ちなみにプラモデルのスミ入れと同じ現象です。
筆を使用しても問題ありませんが洗う手間を省きたかった理由もあります。
※①補足ですが筆の洗浄にはそれぞれの塗料に合ったうすめ液が必要になりますのでご注意ください。
- Mr.カラー(ラッカー塗料)にはMr.カラーうすめ液
- タミヤのエナメル塗料にはエナメル溶剤
- ウェザリングカラーにはウェザリングカラー専用うすめ液
メーカーはそれぞれ上記の使用を推奨してます
※うすめ液のamazonレビューには本来の用途とは異なる使い方をして辛辣なコメントをなさっている方も見受けられますが気にしなくていいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
公の場で自作の造形物をお見せしたのは今回が初となります。blogでの紹介は遅れてしまいましたが、ハロウィン当日までに完成させることは叶いましたので良かったと思います。
もう少し多くの制作風景を写真に残せられたら良かったのですが大体の流れは以上の通りです。
この作品は製作前のデッサンを行っていませんがジャックオランタンやパンプキンの写真、画像は何枚か集めました。お手本となるものがあると上達が早いと感じます。
また、
一口に粘土といっても「オーブン粘土」「紙粘土」「石塑粘土(石粉粘土)」「木粉粘土」など様々ですが今回使用した「樹脂粘土」はクセが少なく比較的扱いやすい粘土です。慣れ親しんでいるであろう紙粘土と扱い方は大差ありません。乾燥後は若干の弾力が残りますが非常に強固なので強度が必要な造形物とも相性がいいです。デメリットとしては自然乾燥してしまう前に形作らなければいけないので、じっくり造形したい場合には加熱するまでは形を整えられるオーブン粘土がおすすめです。
本日の内容は以上になります。
うまく答えられるか保証はしかねますが、もしも「ここが知りたい」など質問がありましたらコメントにてお願いいたします(名前は無記入でも書き込めます)。また、私もまだ成長過程ですので逆にご教授していただけるコメントも歓迎です。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました
新作を投稿しました。よろしければお立ち寄りください(2022/10/06)
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