今回はランナーパテを使った合わせ目消しのやり方をご紹介します。
全塗装する場合には省略できる技術ではありますが、無塗装で仕上げられるメリットがあります。
無塗装向けとして紹介されることが多いこの手法ですが、市販のパテ同様に傷の修繕にも利用できるので覚えておいて損はないと思います。
写真やテキストだけでは伝わらないこともあると思い動画も制作しましたのでご活用ください
ランナーパテを使ったプラモデルの合わせ目消しの方法
作業の流れはYouTubeで動画にしてありますので事前に視聴しておくと内容を把握しやすくなると思います。
動画だけでも再現性の高い構成となっておりますが、
このページ(下記)では動画では伝えきれなかったより詳しい解説や留意点を解説しているのでさらに理解力を深めたい場合は読んでみてください。
使用した道具はページ最下部にまとめて記載してあるので必要に応じて参考にしていただけたらと思います
手順
右の写真が今回目指す完成図になります。
作業手順は大きくわけて4つです。
- ランナーパテを製作する
- パーツを分解し、合わせ目を消したい断面にパテを盛る
- 乾燥後、やすりなどで表面をフラットにする
- トップコートで仕上げ、組み立てる
これらの工程について細かく解説していきます
ランナーパテの作り方
ランナーは溶剤形接着剤(後ほど詳しく記述してます)で溶かしペースト状にします。
まずはニッパーなどで細かく切り刻みます。
この作業は雑でも問題ありませんが、小さい方が溶けやすくなります。
使用するのは製作したキットのランナー(同色)なので、あらかじめパーツを切り出した時のランナーを保管しておく必要があります
空になった塗料瓶を洗浄することで代用できますが、模型店で100円程度なので手間であれば購入してしまってもいいかと思います。
参考までに実演で使用しているのはタミヤ様の「スペアボトルミニ(丸ビン)」10ccです。
ただ、上記と同様のものをネットで発注すると割高なので、
通販で済ませたい場合はクレオス社の「Mr.スペアボトル (L) 」(容量30cc程度)が100円程度で代用できます
溶かしたあとに「なんだかペーストの粘度が高い」と感じてもあとから溶剤を注ぎ足して調整することも出来るので過度に慎重になる必要はありません。
使用する溶剤形接着剤はタミヤセメント(流し込みタイプ)です。
※通販では割高なのでお近くの模型店で購入することをオススメします
タミヤセメントには流し込みタイプではない白いフタの商品がありますが、ランナーパテを製作する目的なら緑色のフタの流し込みタイプが向いています。
また、同様の商品に「タミヤセメント流し込みタイプ”速乾”」もありますが、合わせ目を消す目的なら速乾ではなく通常タイプの方が向いています。
早く乾いてしまいますと、接着した断面が溶け癒着する機会を奪ってしまうことになるのでゆっくりと乾燥する通常タイプの方が向いているという考え方です。
ちなみに今回のランナーはABS樹脂と呼ばれる塗装では扱いにくいとされるプラスチックですが、タミヤセメント(流し込みタイプ)でも溶かすことが出来ます。
成分に違いがあり、
白ビンには合成樹脂が11%入っていますが緑ビンには入っておらず有機溶剤100%です。
今回の例で言いかえれば、
白ビンには最初から透明のランナーが溶けている状態に近い(厳密には違いますが)と認識していただくとわかりやすいかと思います
溶剤で浸しましたら乾燥してしまうのでフタを密閉し、一晩経つと溶けてペースト状になります。
溶解自体は数時間で起こりますが、パテとして使用できるようになるには一晩必要です。
どうしても早くランナーパテを使いたい場合は最初に切り刻んだ工程を次のように変更します。
カンナがけの要領でパーツから細かいカスを削り出し、それを溶かせば短時間で行えますが手間のわりに製造量は少なく大変です。
すぐに必要、あるいは少ない量で足りる場合は選択肢にいれてよいでしょう。
完成したランナーパテは市販のパテ同様に傷の修繕、穴埋めにも応用できるのでコスパのいいアイテムと言えます
合わせ目を消したい断面にパテを盛る
合わせ目を消したいパーツを分解し、その断面図に制作したパテを盛っていきます。
画像のようにペインティングクリップで持ち手を作ることで作業がしやすくなります。
私は筆を洗浄する手間をはぶきたかったのでつまようじで盛っていますが、解説を行っているサイトや動画では皆さん筆を使っていますので念頭に置いていただければと思います。
パテは言ってしまえば溶けたプラスチックなので筆をそのままにしておくと使い物にならなくなります。
洗浄する場合はツールクリーナーでしっかりと手入れをしましょう
パテを盛り終えたらもう片側のパーツを合わせ、隙間が出来ないように圧着します。
あふれた溶剤がはみ出ますが、合わせ目を消すのであればその方が都合が良く盛り足りないと感じたら接着面をなぞるように上からランナーパテを追加で乗せます。
この段階では汚く見えてしまいますが次の工程で自然な表面へと調整するので触らずに乾燥を待ちます。
表面の硬化は一日で完了しますが、
やすりをかけると接着剤の匂いが漂うので乾燥期間は最低でも2日以上、出来れば3日は時間を置いた方がいいです。ここは気長に待ちましょう
表面をフラットにする
私は手っ取り早くデザインナイフで削ぎましたがえぐりすぎるとやり直しになってしまうので、失敗したくない場合は金属製のダイヤモンドヤスリで削り取ります。
ただ、
棒状やすりの特性上、一直線の範囲を削っていくので余計なところまで削ってしまうリスクが高いです。
こちらも注意が必要なことに変わりはないので自分に合った道具を選んでください
デザインナイフor金属やすりを終えたら、スポンジやすりで表面を落ち着かせていきます。
番手は400番ぐらいから始め、1000番ぐらいまで研磨すると綺麗になります。
一番大変な工程ですが、完成度に直結する作業でもあります。
今回は丸みのある肌の合わせ目消しなので曲面にフィットするスポンジやすりを使ってますが、
ガンプラなど合わせ目を消す表面が水平な場合は当て板に紙やすりを貼って使用します。
私は安価なスポンジやすりを使っていますがもっとも高性能なものとしてはゴッドハンド様から発売されている神ヤスシリーズが有名です。様々な番手を取り扱っていますのでご自身に合ったものをお選びください
仕上げ、組み立て
やすりで研磨した部位とそうでない部位とでは表面の色味が変わってしまうため、仕上げにつや消しトップコートスプレーを吹いて質感を均一にします。
手元に水性のトップコートしかなかったのでそちらを使用しましたが、
無塗装で仕上げる今回は下地をおびやかすリスクがないのでラッカー系のトップコートも使用できます。
トップコートですが種類が豊富でよくわからないという方も多いと思うので簡単にまとめました。
大きく分けて水性とラッカー系の2種類あるのでそれぞれをざっくりと解説します
- トップコート(つや消し)容量88ml
青いラベルのもっともオーソドックスなタイプ。水性なので下地をおびやかすリスクが低いのが特徴。塗膜はラッカー系と比べると弱いです。 - プレミアムトップコート(つや消し)容量88ml
上記とほぼ同じ性質ですが、値段が少しだけ高いので上位互換と認識していただくとわかりやすいです。扱いやすさも向上していますが、価格や慣れを考慮しあえて青いラベルを愛用する方もいると思います。
- Mr.スーパークリアー(つや消し)容量170ml
ラッカー系なので乾燥が早く、塗膜の保護性能が高いのが最大の特徴。ただ下地にガンダムマーカーなど弱い塗料を使っていると浸食してしまったり、乾燥時は湿度の影響を受けやすいというデメリットがあります。(ちなみに湿度は低い方が成功しやすいです) - Mr.スーパースムースクリアー(つや消し)容量170ml
こちらも上記とほぼ同じ性質の上位互換と認識していただいてよいかと思います。価格も紹介した4種の中で一番高いものになります
お分かりの通りどれも一長一短ですが、
初心者にオススメするならプレミアムトップコート(つや消し)が失敗のしにくさという観点から扱いやすいと思います。
また、
トップコートにはつや消し、半光沢、光沢とありますがここは好みになります。
一般的にはプラスチック感を消したいためにつや消しを使用する場合がほとんどですが用途などによって使い分けることになります
トップコートを終えた段階で合わせ目消しの工程は終了となりますが、無塗装ではゲート跡が残ることがほとんどです。
そこでタミヤ様の「ウェザリングマスター(Hセット)」を使いゲート跡を目立ちにくくしました。
あくまでごまかす程度なので完全に消すことは出来ません。
塗料とは少し違いきめの細かい粉末を化粧のように乗せるアイテムです。
付けすぎたと感じたらふき取ることも出来るので気軽に試してみてください。
ウェザリングマスターを完全に定着させたい場合はトップコートと順序を逆にすれば可能です。
今回はリカバリーが利くようにこの順序(1.トップコート⇒2.ウェザリング)にしました。
美少女フィギュアや美少女プラモデルの肌にグラデーションをつける場合にも使えるのでオススメのアイテムです。
あとは各パーツを再び組み立てて完成となります。
組み立てる段階で軸がきつすぎる場合はやすりなどで削って調整し、逆にゆるすぎた場合はアロンアルフアで軸を太らせ、削って微調整することで改修できます。
軸の太らせ方はこちらで詳しく解説しています。同じタブで開かれるのでご注意ください
まとめ
塗装を前提とするなら今回の工程を省略することが出来ますが、習得すれば無塗装だと感じさせない作品に仕上げられる技術です。
手間はかかりますが、全塗装するよりも少ない道具で完結するのもメリットです。
初めて行う場合は失敗してしまう場合も考えられるので安価なプラモデルで練習するのが無難です。
作成したランナーパテは小瓶で長期間の保存が利くのでちょっとした傷の修繕、穴埋めにも利用できるので覚えておいて損はないと思います。
実演は以上になりますが、
ページ最上部の「ハウツー」タブをクリックまたはタップで工作系の記事を一覧で見られますので合わせてご覧いただければと思います。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました
使用した道具
代用品なども含めすべてのツールをまとめました。必要に応じて参考にしてみてください
- 「ニッパー」
ランナーを切断するのに使用しました - 「アートナイフプロ」
パテ盛り後の成形で使用しました。ナイフが苦手な場合は「ダイヤモンドヤスリ」を使用します - 「スポンジやすり」
表面の研磨作業に使用しました。リンク商品は今回必要な番手(粗さ)が揃ってます。少し割高にはなりますが最も高性能なスポンジやすりとしてはゴッドハンド様から発売されている神ヤスが有名です - 「タミヤセメント(流し込みタイプ)」
ランナーを溶かしペースト状にするために使用しました。通販では割高なのでお近くの模型店で購入することをオススメします - 「Mr.スペアボトル (L) 」
パテ溶解、保管に使用しました。私が使用したものは通販だと割高だったので代用品として選別しました - 「プレミアムトップコート(つや消し)」
表面の仕上げに使用しました。リンク先は私が使用した水性タイプのものになります - 「ウェザリングマスター(Hセット)」
ゲート跡を目立ちにくくするのに使用しました。美少女プラモデルやフィギュアの肌にグラデーションをつける際にも重宝します - 「つまようじ」
パテを盛る際に筆の代わりに使用しました。使い捨てることで筆を汚さず、洗う手間も省けます - 「ペインティングクリップ」
持ち手を作るために使用。また、トップコートを吹きかける時や乾燥させる時にも必須になります - 「ツールクリーナー」
私は使いませんでしたが筆を洗浄する際に使用します - 「当て板」
今回は使用しない道具でしたが合わせ目を消す面が平らな場合に重宝します
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